ジロー

【7.18】

傷つき、道ばたに落ちてたヤマバト。子供たちが見つけて、僕が預かることになった。でも、どうにもできない。僕に医学的な専門知識はない。

電話やネットで詳しそうなところを当たった。だが、傷ついているものを扱えるのは結局「獣医」だけなんだということがわかった。

そしてジローを今朝、動物病院に連れていった。

ジロー。なんとなく僕は、ヤマバトをそう呼んだ。本当になんとなくなので、深い意味がこめられてるわけじゃないが、ただ、ヤマバトと呼ぶよりはジローと呼びたかった。そんなジローが拾われてから、今日で3日目になっていた。

ジローを病院に連れていく道中、僕はいろいろと考えながら車を走らせた。いろいろと考えを巡らせ、動物病院のトビラを押したわけだが、その割には病院に入った瞬間、すべての環境が空気ごとごっそり変わったように事はあっさりと進み、気がつけば僕は手ぶらで外に立っていた。

ジローは病院が引きとってくれた。無償で。

病院の外で、僕はむしょうに自己嫌悪に襲われていた。自分自身の行為に対してこれほどまで「やるせなさ」を感じるのは、そうあることではなかった。

僕は、病院=金銭という図式にとらわれ、とても大事な事を忘れていたように思える。僕は、正直、ジローのことを「やっかいな事をしょいこんじまった」と思っていたし、そこに存在する生命の尊さよりも、自分の財布のヒモを締めることばかりを考えていた。だいたいにおいて、僕が心配していたのは、ジローのことではないのだ。

僕は、大事なコトを履きちがえていた。

僕は、自由気ままに生きているわけではないから、自分のまわりを次々と取り囲みつづける物事を、計画的に処理していかなければならない。いかなければならない、けど間違えてはいけない。

たとえ自分の計画を大きく狂わせられようとも、飛び込まなければならないコト。それを間違えてはならない。

間違えてはならない。

病院に連れていく前の日、真っ赤なラインに縁どられたジローの青い青い瞳を見つめながら、僕はようやく大事なことに気づいた。

自由を奪われたのは、僕じゃなかった。

ジローだった。


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