後ろで叫ばない
【4.9】
「ただでさえ」なのだ。
ただでさえお前は目立ち、ただでさえお前は緊張感に溢れており、ただでさえお前は威圧的。
なのだ。
だいたいお前はどうしてそうなのだ。今の今まで考えてもみなかったけど、考えてみるとどうにもこうにもおかしいじゃないか。
白と黒、すなわちモノクロの世界。カラーなんかにゃ到底かないもしない地味ーな世界。冠婚葬祭、そういう世界。
めっちゃ渋いわ。
そんなシックな色しか使ってないのに、お前はどうしてそうなのだ。遠くからでも一目でわかる目立ちっぷり。決して派手ではない。が、決して渋くもない。何だ?お前は。
お前はそんなだ。
そんな妙に目立つお前が、妙に赤いランプをクルクルとさせて、絶妙なタイミングで真後ろに付くと、僕はそれだけでドキドキする。
何も悪い事はしてない。
してないはずなのに。
だからお願い。ホントにお願い。お前がそこに存在するだけで僕はもうドキドキなの。なのだから、後ろでは叫ばないで。その妙にくぐもった声で、その妙に低い声で、その妙に威圧的な声で、お願いだから叫ばないで。
僕は普通です。
僕はいたって普通です。
僕は信号待ちで停車してただけです。何のことはなくブレーキ踏んでただけです。シートベルトしめて実は背筋まで伸びてました。
でも不思議と、お前に叫ばれると「やばい」って思うの。悪い事してなくても、してる気になっちゃうの。誰か他の人に呼び掛けてても、当事者気分になっちゃうの。犯罪者気分になっちゃうの。
なっちゃうの!
だからお願い。もう後ろでは叫ばないでね。
あなたは「ただでさえ」なのだから。