【7.2牛乳】

我々はよく「失ってみて初めてその価値に気付く」という言葉を口にする。確かにその通りかもしれない。僕は今それを痛感している。

奄美地方に台風が接近して早6日。船は来ない物資は来ない牛乳は来ない。不思議だ。牛乳が無いと余計に牛乳が愛おしい。そして牛乳があった幸せな頃のことをついつい思い出してしまう。人は失ってみて初めてその価値に気付く・・・

ちょっと前のコトだ。朝、牛乳を飲もうとすると凍っていた。おそらく家のチルドが寒すぎるのだと思うのだが、仕方なく飲むのを諦め寒くない冷蔵庫に移しておいた。完全に溶けるのを待ってから飲むことにしたのだ。

ところが、まだ完全に溶けてない牛乳を誰かが開けてしまっていた。まだ半分以上も氷の状態なのに、あろうことか犯人は少し飲んでまでいた。僕でも無く弟でも無く母でも無い犯人は、きっと氷が溶けるのを待ち切れなかったのだろう。しかし、これで牛乳の成分バランスは崩れてしまった。

ジュースでも牛乳でも、凍らせると最初に凍るのは水分である。そして最後まで溶けないのも水分である。すなわち、中途半端に凍った飲み物は、水分が抜け凝縮された濃い飲み物となっている。だから僕は牛乳を完全に溶かしたかったのである。だがもう遅い。濃い部分だけを犯人によって飲まれた牛乳は、このまま氷を溶かしても正常より薄い牛乳になってしまう。まるで低脂肪乳の様に。僕は低脂肪乳は嫌いだ。何故なら味が薄いから。

味が薄い牛乳を飲むよりかは濃い牛乳を飲んだ方がまし。と言うより、濃縮され3.5から4.2を超え、おそらく7.2ほどまで濃くなった牛乳を正直なところ飲んでみたい。僕の大好きなカフェオレにして飲んでみたい。走り出した欲望はもう誰にも止められない。

少しのお湯で溶かしたインスタントコーヒーに氷を入れ牛乳を注ぐ。たっぷりと注ぐ。今日の牛乳は凄いぞ。何せ濃縮牛乳還元"前"だからな。ワクワクする。きっと生クリーム並みにコクがあるはずだ。もしかしたら生クリームになってるかもしれない。

ゴクッゴクッ‥‥

何だ!この舌にまとわりつくほどのまったり感は。。何だ!この味わいの深さは。。僕が帰国子女だったなら、間違い無く"What!"やら"How!"を連発していたことだろう。"How Mattari! What a . . ."と。でも僕は帰国子女じゃ無い。おかげで「まったり」という表現を使うことができる。日本人で良かった。

あぁ、書けば書くほど切なくなってくる。例えどんなに牛乳のことを思い出そうとも語ろうとも、今の僕に牛乳が無いという事実は変わりやしないのだ。人は失ってみて初めてその価値に気付く。。

こんなことなら買いだめしとくんだった。


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