【眠りを妨げるもの】

ザッザッザッ・・何かが擦れる音で目が覚めた。

辺りは真っ暗。それもそうか。まだ真夜中だもんな。とりあえず音の出所を確かめなくては。けっこう近くから聞こえてきた気がするのだが。

そういえば、無性に足が痒い。右脚の太ももと、左脚の足の甲。とにかく痒い。驚くほど痒い。こんなに痒いのは何年ぶりのことだろうというぐらい痒い。おそらく蚊の野郎、私が寝てるのをいいことに“痒くなる毒”をシコタマ注入したのだろう。

それにしても掻いても掻いても痒い。ザッザッザッ・・。あっ!なるほどこの音だったのか。あまりの痒さに気をとられ忘れていた。シーツと手が擦れてザッザッザッ・・。目を覚まさせたあの音はコレだったのか。とりあえず不可思議な音の問題は解決した。

が、しかし困ったことに今度は痒くて眠れない。毒素に汚染されている部分を肉ごと削ぎ取って今すぐにでも安らかに眠りたい。それほど眠いのに、この指と爪じゃ肉ごと掘り起こすのは難しそうだ。せいぜい皮を剥ぐのがいいとこだろう。

仕方なくベッドから体を起こし、階下に痒み止めを探しに降りた。確か台所の隅の机の上に転がっていたはずだ。暗闇の中でグリーンの容器を探して“そこら辺”をまさぐる。あった。

キャップを開け、痒いポイントを探すことも無く、痒いと思われる部分全てに薬品を塗りたくった。ふぅ〜助かった。これで落ち着いて眠りにつける。念のため蚊取り線香を焚いてベッドに倒れこんだ。

おかげで再び安眠につくことはできたが、もしあの時、痒み止めが見つからなかったらどうなっていただろう。私は、朝が訪れ街が目覚め薬局が開店するまで、目をギンギンに見開いてまるで何かの仇でも打たんかとするように、ずっと足を掻き続けていただろうか。あるいは、途中で掻き疲れてあっさり寝たかもしれない。今となっては想像の限りでしかないが、まさか皮を剥いで肉を削ぎまではしなかっただろう。

今となっては想像の限りでしかないが。


→メニューへ戻る