10/1「そろりと秋」
なんとまあ静かにそして穏やかに季節が移ってゆくのだろう。去年の台風フィーバーが幻であったかのように、奄美に平和な秋が訪れている。
いつもの年なら奄美に秋を連れてくるのは台風なのだが、今年は少しずつ少しずつ空気が冷たくなっていくのを感じる。日本を縦断する巨大な扇風機が通り過ぎるたびに空をかきまぜ、そして北から冷たい風を引っぱってくる。そんな当たり前の出来事が縁遠い今年の秋。大きな嵐に半ば強引に連れてこられる秋風も、今年は自分の足で南下しなくてはならないようだ。
9月初旬に今年初めてやってきた台風14号が過ぎ去って以来、奄美の空は秋晴れの日々が続いている。忍び足で近づいてくる秋が夜風をひんやり心地よくしてくれているものの、昼間の太陽はまだまだ働き盛り。陽射しは多少優しくなったけれど、表へ出ると肌が汗ばんでくる。先日縁あって秋の海で泳いだが、水の感触は「寒っ!」ではなく「気持ちいい〜」だった。陽光はやわらかく風もひんやりとしてきているので海から上がると少し冷やっとするが、昼間の奄美は夏の彩りをまだ色濃く残している。真昼の太陽の下で夏の楽しみを味わいつつ、日陰や森や山では秋風の心地よさにつつまれる。夏の楽しみも秋の心地よさも、一粒で二度美味しい今頃の奄美だ。
日々ちゃくちゃくと進行する季節変化は肌になかなか伝わりにくいが、ある時ふと「いつの間に・・」と思ったりする。そう、気がつくと夕方の訪れが早くなっていた。
6月の夏至に最も北寄りで折り返した日没地点は再び南へと向かい、ちょうどこの間、秋分の日に真西を通り過ぎた。太陽のラインが天空をずれていくのに合わせて昼の長さも短くなっている。夕陽を見送ると夕御飯に間に合わなくなってしまったのも遠い昔。昼と夜のバランスが程よい今は、たいていの仕事が終わって一息つく頃、空も次第にオレンジに染まってゆく。最後まで夕陽を見送ったぐらいがちょうど夕御飯にもいい時間帯だ。島の夜にも舌鼓を打ちたい旅行者には嬉しい季節だ。
そんな、伸びやかに広がる秋の奄美で何をして楽しもう。夏の終わりの寂しさと秋の始まりの心地よさが交錯する時期だから、二つの季節をまたいで楽しみがふくらむ。夏休みの頃に比べると人の数は半分以下、いやもっとずっと少ないだろう。だからどんなにメジャーなスポットに行っても、誰にも邪魔されずにゆっくり静かに自然に浸ることができる。
少し肌寒い風に吹かれながらゆるり夕陽を見送ると、頭の中に広がるのはいっぱいの空っぽ。心地いい空っぽで身も心も満ち足りてゆく奄美の秋。