5/30「花咲か奄美」
暦は五月を迎え、すでに「梅雨入り」となっている奄美諸島。梅雨だから毎日毎日悪天候の雨ザーザーかというと決してそうでもなく、五月の間は比較的よく晴れた。雨2曇4晴4というところだろうか。
梅雨の割に好成績だ。
皐月に水無月と2ヶ月も奄美の梅雨は長いな〜、と思うけど、毎日雨ってわけでもないから大丈夫。梅雨の奄美は意外と極上。雨も多いけど楽しみも多い。ちょっとでも陽が射せば気温はグッと上昇するから、勢いにのって海水浴も可能だし、梅雨の晴れ間にのぞく空はもう夏色のそのもので、心だってウキウキしてくる。
そして何より、奄美の梅雨は花*花*花の季節なのだ。
梅雨の雨と夏の陽射しに元気をもらい、次から次へと花ひらく奄美の植物たち。それはまるで、花咲か爺さんが灰をふりまいて歩いているよう。天空から降りかけられる透明な雫に、奄美が花でいっぱいになっていく。
普段は一面グリーンの山々に、梅雨の頃は白い花が目立つ。代表的な梅雨の花といえばイジュ。高倉の建材にもなる大きな木に、ツバキのような花がわんさかと実る。『花咲か奄美』のタイトルバックに浮かぶのはコンロンカ。よく見ると花は黄色だけれど、大きく広がった白色のガクが遠目には目立つ。そして樹上にフサフサと白い花を揺らすのは、ヤンバルアワブキ。朝戸から和瀬トンネルへと向かうバイパス沿いの斜面には「こんなにあったのか!」と驚くほど。
沿道や民家の近くに目を移すと、モッチリとした雰囲気をまとってサネンが黄色い花をぶらさげる。サネンはゲットウとも言い、その葉で餅を包んだりもする。でも餅包みの人気者といえばカシャの方だ。サネンより芳香のあるカシャの葉は香りだけで甘い気分にさせてくれる。和名はクマタケランと言い、繊細な形の花を並べる。
もちろん白い花ばかりではない。赤い花だって梅雨には元気だ。五月の終わりに花開くデイゴは、六月中頃までが花期となる。まさに梅雨の花。そして赤の代表格のハイビスカスも、気温が上がり水分が豊富な梅雨を迎えて花が一気に勢いづく。
ハイビスカスの中でムシャムシャと。花粉の多い花たちは虫たちにも大人気。一番最初に登場したイジュの花も、カナブンやバッタに愛されている。
おっとおっと忘れちゃいけない。梅雨には紫の花もあるんだった。沿道の斜面などに目立つノボタンの大きな花びら。そして梅雨前から咲き始めていたノアサガオも毎日元気に花を開いている。
雨が落ちる日は、シトシトト濡れる空気に包まれながら山を歩くのも一興だ。トトロの傘のような大きな葉のクワズイモ。食わずな芋なだけにもちろん食べられない(食べると舌が刺されたように痛く、掘るだけでも肌がヒリヒリ痒むとか)。だが、頭巾をかぶった童のような結構愛らしい花を咲かせる。
せっかくだから奄美で一番高い山「湯湾岳」も歩いてみよう。霧に包まれる山道を足下を確かめながら登りゆけば、白く小さきイチゴの花に出会うことができるかもしれない。
他の野イチゴたちは花の頃をとうに終え、赤や黄色のイチゴを実らせパクパク食べられた今頃になって、ようやく花を咲かせる野イチゴがある。その名もアマミフユイチゴ。霧中の森に立つ白い花は、湯湾岳と井之川岳(徳之島)でしか見ることができない。
花を追いかけ野から山へ。でもでも海もお忘れなく。梅雨といっても晴れます晴れます。青い空を見れば青い海を連想してしまうものですから、思考の連鎖に体をまかせてシーズン前で静かな海へひと足早く誰の足よりも早く砂浜に足跡をつけにいきましょう。海岸沿いのアダンはもうすっかり熟れて赤くなって、そろそろ浜辺に落ちる頃。熟した香りに誘われてアダンの実にはヤドカリがいっぱい。アダンの木陰にねそべってヤドカリ観察も乙なもの。
そうこうする間に我が家の庭では、夜香花がツボミを付けていた。梅雨の花たちを眺めてるうちに、夏がもうそこまでやってきている。花咲か奄美を満喫したら、梅雨明け奄美がやってくる。
まぶしい陽射しをさけるように夜開く花、夜香花。闇の中から漂ってきた強い香りに、火照る肌を冷ますように歩いた真夏の夜のことを思い出した。
また夏が来る。