4/20「輝く緑、誘う青」

 もうすっかり春である。というより、気候的には「初夏」と言った方がいいかもしれない。よく晴れた日には少し動いただけで汗ばむ。だが、風は涼しく心地よく。暑くもなく寒くもなく。秋と並んで今頃は気候的にとても過ごしやすい。

 日本の春というと桜だ。ソメイヨシノを代表とする日本の桜たちは花を開きはじめ、温もりとともに北上するその様は「桜前線」と表現される。先日、その桜を鹿児島で見てきた。白い白いにぎやかな桜だった。このソメイヨシノは奄美にもあるが、冷え込みが足りないためか花の付きはいまいち。いっせいにブワッとはなかなか咲いてくれない。やっぱり島の桜は緋寒桜なのだなと思う。

 桜に彩られない島の春はひどく寂しそうに思われがちだが、決してそんなことはない。平地の少ない奄美大島は、面積のほぼ9割が山である。すなわち、島を塗るのに最も多く使われている色は「緑」。その緑たちが鮮やかな新芽を出し、山という山を新しい色に塗り替えていく季節。それが島の春だ。花を愛する日本人の桜前線に比べればそれは地味かもしれない。だが、島をおおう山々が命を萌やす春。その迫力はなかなかのものだ。

 そんな奄美の春を彩る新緑たちが顔を出すのは二月。山肌にポツリポツリと現れた淡い緑は、三月の終わりには目に見える山肌をすっかり塗り終える。そうして森の春は高い深い山へと移り変わってゆく。奄美1高い山である湯湾岳(ゆわんだけ)。冬には雪が降ることもある湯湾岳の山頂付近では、四月の終わりにやっと森の春が訪れる。

 湯湾岳を宇検側登山口から登りはじめたなら約1時間後、大和村側登山口から登りはじめたなら約10分後、鳥居をくぐると目の前にちょっとした広場が現れる。奄美島を造った神が降り立ったと言われる「二神降臨の碑」と、豪族「湯湾大親(ゆわんふうや)の墓」があるその広場には、木製のちょっとした展望砦がある。そこから眺める奄美の山々の春は、実に見事で清々しい。奄探的奄美十景に必ずノミネートされるであろう「湯湾岳の春」。ぜひ訪れて欲しい。(例年、GW前から湯湾岳の春は見られるが、今年は芽吹きが遅れているのでGWぐらいがいい頃でしょう。きっと五月いっぱい楽しめるはず。ちなみに先日の新聞連載の「パッチワークの森」はここで撮影しました)

 さて、森の緑が輝きを増す今。春いっぱいの奄美の山々から視線を落とすと、眼下には青々とした海が広がっている。まぶしい太陽の光を浴びて輝きはじめたのは、どうやら緑だけじゃないようだ。海の青も魅力的になってきた。山ばっかり行ってる場合じゃない。海の季節もどんどん近づいてきている。奄美の春は忙しい。

 朝起きて青い空を見ると、空の色に誘われて海へ出かけたくなる。海の色は空次第。冬の曇り空を映した灰色がかった海も、ようやく衣替え。今年は特に天気が悪い日が多かったので、この時がどんなに待ち遠しかったことか。初夏の空に彩られた海が「こっちもいいぞ〜」と僕たちを呼んでいる。

 奄美の梅雨が始まるのは五月の中頃。気候的にはもう初夏の「半袖短パンな春」の奄美は、雨も降るし晴れもするし、ほぼ順調に無難な天気で梅雨へと向かっていく。

 春の霞かそれとも黄砂か。春の空といえば、青に薄くベールをかけたような水色の日が多いが、ザザーと雨が降りカラッと晴れた翌朝なんかにはなんともいえない青い空が広がっていたりするからたまらない。ドキドキするような青い空を大浜で感じたいなら午前中。上部駐車場に立って海へ向かえば、五月のさわやかな風が心地いい。

 午前中のすこやかな風に包まれた後は、太陽の上昇に応じて気温も上昇していくのを感じることだろう。「いや〜暑い」と感じたなら、海に入るのもいい。まだちょっと勇気はいるけど、天気にさえ恵まれれば今の時期から海水浴も可能だ。「なんだこの暑さは」っていう日がたまにある。泳ぎたい衝動にかられてしまった時のために、奄美旅の際は、念のためバックに水着を入れておこう。気温の上昇とともに水がどんどん身近になってきているから、タオルも常備しておくと色々と役立つはず。

 そうして一日遊んだら、締めくくりに夕陽が見たいシーズンにもなってきた。冬の間、南の方へ沈んでいた夕陽が、春分を過ぎて西の海岸に帰ってきている。北から南まで、島には数限りない夕陽スポットがある。東シナ海に面していれば、夕陽が見れる可能性は高い。太陽の方向を眺めながら、自分だけの夕陽スポットを見つけるのもきっと楽しいだろう。
 春の奄美のいろいろな色を、さあ、めいっぱい味わおう。


※おまけ※

 ヒトの目は器用だから、五月晴れに恵まれたならどこでどう過ごそうと青空を気持ちよく感じていられるだろう。だが、もしも写真に撮りたいと思ったならちょっとだけ工夫を。

 カメラは光にとても素直なので、青を青く撮るためには背中に太陽を背負おう。これが単純明快なポイント。太陽は東から昇って西に沈むので、太陽との位置関係を考えれば色と時間の関係がわかるはず。青を求めるなら、大浜などの東シナ海側なら午前中。長雲峠の展望台などは午後からが気持ちいい。


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