8/28「猛烈台風16号」

 『大型で猛烈な強さの・・』。「猛烈?」と聞き慣れない言葉に驚いた。調べてみると『非常に強い』よりさらに強い階級。最上級の風速へ贈る言葉が『猛烈』だとわかった。呼び名からして強そうな台風だ。その台風はまだその頃はサイパン上空にあった。

 そしてあれよあれよと言う間に台風16号は、ものの見事に南西諸島へと進路をとる。左に行きつつ斜めに上がる?みたいな。台風としては実に理想的な、そして模範的なコース選択。理科のテストで正解をもらえる動きだ。別に無理して模範回答をしなくてもいいのに。受験生に優しい台風16号。そんな台風16号は、ゆっくりと着実に奄美に近付いてきた。

 台風の接近にともない、まず変化が現れたのは島の東海岸側。つまり太平洋に面した海岸だ。風が吹きはじめる前から、何よりも先に島には波が届いた。サイパンやグアムあたりの遠方から太平洋をはるばる伝わってきた波が、島にぶつかって砕けた。手広(てびろ)や城(ぐすく)といったサーフスポットでは大きな波が立ち、荒波で知られるホノホシ海岸では波しぶきが風に舞っていた。

 台風16号はそのまま進路を北西にとり、この様子だと奄美が暴風域に入る怖れは少なくなった。と、安心したのもつかの間。北西に向かって進んでいた台風が少しずつ速度を落とし、ついには止まってしまったのだ。「停滞」あるいは「ほとんど停滞」。どうやら北と東に高気圧があり、それに押さえられて行き場を失ったようだ。ということは、もしかして?。そう、そのもしかして。あろうことか台風16号は西へ進路をとってしまったのだ。奄美にとっては「最悪のコース」である。

 停滞から動きだした台風16号は、西へ西へとまっすぐに奄美を目指した。台風による波の影響を受けにくい島の西側の海岸も強風域に入った頃からザワザワと波立ちはじめ、太平洋に続いて東シナ海も荒れ模様になった。島をとりまく全ての海はやがて白い波に占拠され、そしてついに船が止まった。

 8月26日の夜を最後に、島の海路は絶たれた。飛行機はまだ発着しているものの、物資の補給はほとんどが海の便。毎日大きなコンテナで運ばれてくる生鮮食品がしばらく来ない。牛乳やパンを筆頭に、スーパーやコンビニの棚からは食品が消えていった。相変わらずゆっくりと進んでいる台風16号。物資を補給する次の船は、この台風が過ぎ去るまでやって来ない。今回は船の欠航期間がとても長くなりそうだ。

 強風域に入ってからというもの、時間の経過につれて島には強い風が吹くようになった。今回は相当ゆっくりと近付いてくるので、風が速度を増していくのもゆっくりだ。昨日より今日、今日より明日というテンポで風が強くなっていく。じりじりとにじり寄ってくる台風16号。最後まで「それてくれ」と願ったが、願いは聞き入れてもらえなかった。奴はやってくる。急激に進路を変えてまで奄美に寄りたいとは、そんなに奄美が好きなのか。いよいよ暴風域入りを明日に控えた8月の28日。その日の夕方は嵐の前の異様な雰囲気を代弁するかのように、空気までもが赤く染まっていた。

 8月29日。The Day.とうとうその日はやってきた。朝から吹き荒れる暴風雨。雨戸を叩く激しい音と家屋の揺れで目が覚めた。家壊れそう?。不安いっぱいの中、耐えに耐えた8時間。我が家の場所は今回は序盤の風に大きく当たり、その間は家から1歩も出られない状態だった。いつもは吹き返しの風が当たる場所なのだが、今回は台風が横に進んできたために風の当たり方も違ったようだ。凄かったのは昼間の間だけで、夕方からは落ちついてくれてホッとした。とりあえず我が家は被害もまあまあ。ベランダのトタン屋根が1枚飛んで、木製の塀が半分ほど壊れて、バナナの木が1本折れて、緑道の植物が根こそぎ倒れ、クーラーの室外機が漏電したぐらい。横から吹き付ける雨に少し雨漏りもしたが、家が壊れなかったので一安心です。あ、そうそう。大風の中、外の様子を見に行ってメガネを吹き飛ばされるという珍事件もありましたが、それは台風のせいというより半分は人為的ミス。どんまい父さん。ちょうどメガネ屋さんから割引券も届いていたし、あきらめて新調いたしましょう。

 さて、16号が去ったばかりだが、南の海上にはすでに18号が誕生している。16号とコースが似ているだけに今後の動向が心配だ。それにしてもサイパンやグアムからやってくる台風の姿を見るにつけ、地球って狭い気がする今日この頃。今年もいよいよ台風シーズン到来か。やれやれ。


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