4/7「アカヒゲの合唱」

 春である。春らんまんである。春らんらんでもある。3月末に降り続いた雨もどこへやら。すこぶる気持ちのいい天気に、最近恵まれている。最盛期を迎えた新緑の森に光があたると、キラキラと輝いてまぶしい。すこやかな緑というより、やや黄色がかった照葉樹の新緑。島に紅葉はないが、この震えたつような山の彩りは北の秋に負けないほど豪勢な装いだ。

 奄美の山々が元気いっぱいのこの時期。木々の勢いに負けじと競うように、鳥の声もにぎやかに響く。これからセミのシーズンまでは、山から聞こえてくる野鳥の声がふとした時に心をいやしてくれるだろう。そんな季節の先陣をきって、春を高々と謳うのがアカヒゲだ。どこかの海賊の船長でもやっていそうな名前のこの鳥は、赤いヒゲをたくわえた鳥ではなく、赤い体に黒いヒゲをちょこんと付けた小さな鳥。大きさはちょうどメジロぐらいで、ぷっくり丸まるとした姿をしている。この黒ヒゲのアカヒゲ船長が、実に美しい声でよく鳴くのだ。ピーヒヨヒヨヒヨ。ピヨロピヨロピヨロ。ピロロロロロ。音の出し方は様々だが、甲高く透き通る声であっちからこっちから歌いかけてくる。こちらも真似して口笛で歌いかえすと、ちゃーんとまた返してくるから面白い。

 先日、湯湾岳に登った時のこと。静かな森に向かって口笛でアカヒゲをやってみた。すると私の口笛に呼応するように森の遠くから近くからアカヒゲが声をあげた。「アカヒゲさん、どこにいるの?」と思った時は自分がアカヒゲになってみればいい。そうすると向こうから「ココにいるよ」と応えてくれる。

 湯湾岳や長雲峠といったちょっとした森の中に行けば、甲高く響くアカヒゲの声は必ず聞こえてくる。でも森の中へ入らなければいけないかというと、そうでもない。民家に近い山の斜面にだってアカヒゲは結構暮らしている。特に夜明け前によく鳴くのだが、静まり返った昼の山でもアカヒゲがいるかどうかは確かめられる。そう、口笛を吹いて呼んでみればいい。この時期のアカヒゲはきっと応えてくれるはずだ。


<<--インデックスへ
(C)ポケット奄探
i.amamicco.net