10/11「サシバの季節」

 ピーックイー・・ ・ ピーックイー・・ ・ 。山にサシバの声が響き渡る。とうとう渡ってきた。奄美に秋を告げる声だ。

 「秋」と言っても、奄美大島に際立った紅葉は見られない。もちろん色付く木もあるが、全体を見れば少数なので目立たない。だから一般的に島には紅葉は無いと言われる。まぁ常緑の照葉樹が山を覆っているから仕方のない話ではある。かといって秋らしい風景が絶望的に無いわけでもない。ご安心を。

 奄美の秋と言って思い浮かぶのはまずソテツの実りだ。赤いソテツの実も熟れる頃♪と有名な新民謡「島育ち」にも歌われているが、それが今頃である。ソテツの頭の天辺にちょこんとのった丸い雌花。あの黄色い楕円体の中に赤いナリ(ソテツの実)が実り熟す頃、奄美の空は秋の色に包まれる。どこまでも突き抜けていきそうな色をした空。浮かぶ雲は縦にわき上がるのではなく、横に流れていく。ぷっかりぷっかり。まるで空に島が浮いているようだ。空気感はやわらかく、夕焼けも辺りをつつみこむ優しさに満ちている。奄美、秋色。

 陽射しはまだ勢力を保っているが、吹き抜ける風はひんやりと冷たい。太陽光と冷風のミックス。ちょうど過ごしやすい季節だ。そんな折、秋晴れの空を見上げると上空を舞うタカの姿が目にとまる。タカ目タカ科サシバ。渡り鳥のサシバは日本本土で夏を過ごし、寒くなると南へ渡ってくる。奄美でとどまるものもいれば、もっと南へと進むものもいる。島に秋を告げる鳥だ。

 空気の流れに乗るように、羽を動かさず滑空するサシバ。時折、ピーックイーと声が響く。耳に届くその高音の歌声は、まるで「ただいま〜」と挨拶しているようだ。こちらも「おかえり〜」と口笛で声を真似てみる。すかさずサシバの声がまた響いた。「この冬もどうぞよろしく」と。

 風にのって鳥が渡ってくる。北から南へ。ニシ(北風)が吹きはじめる。


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