4/18「ブンブク」
4月の18日と19日は、今年、昼間に最も潮が引く日だった。干潮時の潮位は-13cm。普段海の中に沈んでいる部分も海面上に姿をさらされてしまう。奄美は遠浅の海岸が多いので、各地で浜や磯が広がったことだろう。宇検村では枝手久島まで歩いて渡れたというから凄い。
普段から海には潮汐(潮の満ち引き)があり、日々潮汐運動は起こっている。潮が満ちて海水面がもっとも高くなる時を満潮、逆に潮が引いて海水面がもっとも低くなる時を干潮と呼ぶが、この満ち干きのサイクルはそれぞれ1日に2回訪れ、だいたい6時間の間隔で満潮→干潮→満潮→干潮というようにくり返されている。もちろん潮の満ち干きが起こっているのは日本だけではなく、程度に大小あるものの、世界中の海で潮汐は起こっている。
この潮汐運動は、「海」という地球表面の7割を占める膨大な水の集まりを動かしているわけだから、そこにはとてつもない力が働いていると想像できる。その力の源は地球だけにおさまらない。地球レベルを超え、月や太陽までも関わってくるのだ。
日々回転している地球は遠心力によりだ円形にふくらんでいるが、そのふくらんだ水を月と太陽が引力によって引っぱりあい、そして、引っぱられた海水は潮汐運動となって潮の満ち干きを作り出す。こういう仕組みになっている。また、潮汐を産み出す月と太陽の引力は、月・地球・太陽の位置関係で変化し、3つの星が一直線上に並んだ時(新月か満月)、引っぱる力は最も強くなり(大潮)、地球を軸に月と太陽が直角になった時(半月)、引っぱる力は最も弱くなる(小潮)。引っぱる力の強弱により潮の流れにも大小が生じ、大潮・中潮・小潮・長潮・若潮などの潮汐変化もうまれる。潮の満ち干きはなかなかにあなどれないもので、奄美だと干潮と満潮の差(干満の差)は最大で2mだが、日本最大だと長崎県の有明海で6mにもなり、世界最大だとカナダのファンディ湾で15mにも達するというから驚きだ。15m・・。4階建てのビルが潮の満ち干きで消えたり出たりするのか・・。凄い。
さて、解説はこれぐらいにして、そんな大潮の日、私は笠利町の喜瀬海岸に行ってきた。喜瀬集落がある湾はもともと遠浅の海岸で、潮が引くと広大な干潟が現れるのだが、今回はさすが-13cm。湾のほとんどが干上がり、海は真ん中に少ししか残ってなかった。凄い!と思いつつ一屯崎から沖を眺めると、「かくれ浜」も真っ白に輝いている。これまた凄い!。はやる気持ちをなだめながら現地に車を走らせた。
現地に着くと、小さな湾をふさぐように沖に砂浜が現れていた。これなら歩いて湾の端から端まで歩けそうだ。付近には浅瀬が広がっており沖まで干潟が張り出しているものの、少しばかり濡れる必要があった。ただ、深いところでも海面は太ももまでしか上がってこない。5分ほど歩くとすぐ沖の砂浜に到着した。
かくれ浜の付近には不思議な生き物が見られるのだが、ナマコ以外でよく目に入るのがコブヒトデ。角張った白い体は見るからに頑丈そうで、表面にはスパイクのような黒い突起が付いている。まるで武器をそなえた要塞のようなヒトデ。波の模様が残る砂浜を歩くと、あちこちに平べったい物体を見かけた。体中に細かい毛のようなトゲがあるこの物体。名前をカシパンと言う。ウニの仲間で、普段は砂の中にいるそうだ。また、今回は潮が干き過ぎたためか、波打ち際にベラギンポという細長い魚が数匹打ち上げられていた。これも普段は砂の中にいる魚。そして今回一番驚いたのがブンブクとの出会いだった。
ブンブク。名前も変であれば見た目も変である。ウニの仲間ということだが、なるほど体中がトゲにおおわれている。が、しかしウニと違う点がある。この生き物、なんと砂浜を歩くのである。厳密に言えば一般的な丸いウニもトゲを使って動くのだが、このブンブクという生き物は明らかに前進するのである。それも結構なスピードで(カメよりは遅いかも)。もともとは天敵から逃げるために走れるようになったそうだが、この浜では予想以上に引いてしまった潮を追いかけるように砂地を歩いていた。今回出会ったのはヒラタブンブクとコオニブンブク。いやはや海には変わった生物がいるものだと改めて思った。
そうそう、冒頭に「今年一番潮が引く」と書いたが、調べてみると間違いだった。今年昼間に潮が一番引くのは5月17日の-14cm。普段見れない物を目にするチャンスがもう一度ある。さて、今度はどこを訪ねようか。楽しみだ。