3/12「激走170km。原付きの旅。〜7〜」
屋鈍から西古見へ向けて林道を走ってる時のこと。アスファルト道を快調に駆けおりていると、突然、目の前を走る黒い物体に遭遇した。お互い林道を駆けおりながら、しばし並走。そして驚く。「わ!イノシシだ!!」。「わ!人間だ!」とイノシシが思ったかどうかはわからないが、私の存在に気付いたイノシシは急きょ方向転換。慌てた私は急ブレーキ!。逃げゆくイノシシを目で追うと、イノシシは一目散に林道を駆け上がろうとしている。しかし、林道には刈られたばかりの草が散らばっており、足をとられて右へ左へと転ぶイノシシ。体を横に傾けながらもひたすらに足を動かし、もがきながら前へ前へと進む姿に、その慌てぶりがよく表れていた。
リュウキュウイノシシはそんなに体が大きくないものの、やはり道端で会うとびっくりする。しかもイノシシだから『猪突猛進』というイメージがあるだけに、目が合うと「向かってくるんじゃないか?」と構えてしまう。突然の遭遇に、こっちもびっくりあっちもびっくりのひと騒動だった。
イノシシに別れを告げてまた走りはじめると、林道は海岸線へと到達し、視界が開けてきた。眼前に東シナ海の水平線が広がる。ちょうど夕時だったので、柔らかい色になりつつある太陽の光が雲のすき間からこぼれ落ち、スポットライトを当てるように海面に光をちりばめていた。美しい光景に原付きを止め、すかさずカメラを構える。海からかすかに風が吹いているものの、辺りはとても静かだ。息をひそめてジッとファインダーを見つめていると、静かな中にも様々な音が耳に入ってくる。突然、後方の山の斜面から「ガサッ」という物音が聞こえびっくりする。ついさっきイノシシに会ったばかりなので神経が過敏になっているようだ。気を取り直してカメラを構えなおすと、また後ろでガサッ。「気のせい気のせい」と聞き流すがまたガサッ。ゆっくりとではあるが物音は着実に近づいてきている。そのうちフンッフンッと鼻息らしき音も聞こえるようになり、ガサッ・・フンッフンッ・・とセットになった音が斜面を下りてくるのがわかるようになった。姿は見えないが、いや見えないだけに余計に恐怖心がわき上がる。
イノシシなの・・?
何となくさっさとこの場を離れたいなと思いつつも、目の前に広がる光景に「もうちょっとだけ」と離れられないジレンマ。気分を落ち着けるために深呼吸をして辺りを見回し再びカメラを構えようとするが、今度は骨と皮になったイノシシの死骸を見つけてドキッとする。「おいおい、何だよここは。奄美のワイルドライフ満載じゃないか・・」。加速度的に焦る気持ちをなだめつつ数枚シャッターを切ると私は、急いで原付きに飛び乗りアクセルをぶん回した。撤収! つづく・・