3/7「激走170km。原付きの旅。〜6〜」
名柄(ながら)から再出発する頃には、時刻はもう4時半になっていた。宇検を出たのが3時半。ここまでほぼまっすぐ来たのにこの時間か。やはり、焼内湾は想像以上に大きい。
名柄を出ると屋鈍まではもう少しだ。焼内湾の外に向かって走るにつれて、海の色が少しずつ変わっていくのがわかる。透明感が増していき、海の青が爽やかさを増してくる。タエン浜海水浴場まで来ると違いは明らかだ。海岸の砂が道路まで飛び出している元気のいいタエン浜は、砂が本当に真っ白い。そんな純度の高い砂の白色が作り出す海の色は、奄美の他のどの海とも違う色をしている。うっすらと青白さをたたえ、吸い込まれそうなほど青い海。周囲の静けさともあいまって少し怖いくらいだ。ここもまた夏に来てみたいと思った。
また、海を眺めながらしばらく走る。平田、阿室と二つの集落を過ぎると、いよいよ宇検村の西端にいたる。砂浜の海岸線が美しい弧を描き、その側に小さな集落が見える。屋鈍だ。そのまま海岸線に沿って走り、村の外れまで行く。林道の入口が見えてきた。やっとここまで来たぞ。
今回の最終目的地は、曽津高崎(そつこうざき)。ココを目指してやってきたわけだが、道のりは長かった。だいたい寄り道が多過ぎるのも原因の一つだが、旅は寄り道が楽しいのだから仕方ない。まあ、こういうものは計画通りに進まないものだ。
林道に入る前に改めて時刻を確認する。5時過ぎか。初めての林道に入るには気が引ける時間だ。この先、どんな道が待ち受けているのか全く想像がつかない。私の中ではまだ未踏の地。こういう時は勢いに頼る。ダメな時は引き返そう。とりあえず行ける所まで行くべし。
登りだしてみると、林道は意外と走りやすかった。以前来た時は入口付近におおいかぶさるように生えていたススキに「こりゃ車じゃ無理だ」と思い、それで今回の原付きでの挑戦にいたったのだが、ちょうど林道の整備が行われたようで、周囲のススキが刈られていた。見通しがいいため、恐怖心はかなりやわらいだ。しかし初めての道という事実は変わらない。加えて、山という状況が私の緊張を高める。何と言えばいいのだろう。山には独特の気配がある。まるで誰かに見張られているような。そんな気がして、気が抜けない。神経を研ぎすませながら、私は荒れた路面を走り続けた。
だいぶ登った頃から、私は曽津高崎への分かれ道を探しはじめた。灯台があるとはいえ、整った道があるとは限らない。注意して探しながら走ると、海の方へ向かう林道があった。しかし、もう何年も人が通ってないようなその道は草ボーボーの荒れ道である。とりあえず、と原付きで突っ込んでみたものの、すぐ引き返すこととなった。草に足をとられて進めないのだ。仕方なく元きた道へ戻り、再び進むことにした。「あれが曽津高崎線だったら、行くのは無理だなぁ」と考えながら。
林道をそのまま進むと、途中から路面がアスファルトの敷かれた綺麗なものへと変わっていった。当初は屋鈍の方に引き返す予定だったが、道路状況が断然良くなったので、私は西古見(にしこみ)の方へおりることにした。「曽津高崎線も見つからないし、後は瀬戸内回りで帰りかなぁ」と、私は内心がっかりしていた。が、次の瞬間全てのモヤモヤは吹き飛んだ。
わっ!イノシシ!! つづく・・