2/27「激走170km。原付きの旅。〜3〜」

 国直の集落を後にすると、しばらく海岸線の平坦な道が続く。海を眺めながらひた走る原付き。湯湾釜(ゆわんがま)、津名久(つなぐ)と通り過ぎ、トンネルを抜けると役場のある大和浜(やまとはま)だ。トンネルを出てすぐ左には、開饒神社(ひらとみじんじゃ)があるのでちょっと立ち寄る。

 開饒神社は、日本に初めて製糖を伝えた直川智(すなおかわち)を祀っている所。--慶長10年(1605年)。リュウキュウへの渡航中に嵐に会った直川智は、中国の福健省へと流れ着いた。そこで1年余り過ごす間に、国外への持ち出しが禁じられていた「製糖技術」を隠れて習得。命を危険にさらしながらもキビの苗3本を2重底の器に隠して大和浜に持ち帰った。そして磯平に植えたところ・・というふうに、碑には直川智の偉業が記されている。南西諸島の基幹作物であるサトウキビを奄美にもたらした直川智。その偉業に触れ、私は神前に手を合わせた。

 大和浜にはワイルドライフセンターもあるが、今日は月曜日なので休館。私は旅を先に進めることにした。途中、群倉(ぼれくら)を横目に見ながら次の集落を目指す。ちょっと前までは険しい峠道だった大棚(おおだな)集落への道のりも、今は大きなトンネルですぐである。近代的な歩道の広いトンネルが見えてきた。さぁ、大棚へワープだ!

 と思った瞬間、私の身体は震え、神経がピキンッと張りつめた。「寒っ!」。そう、トンネルの中は異常なまでに寒かったのだ。もう正午を過ぎ「春のうららかな」陽射しが降り注ぐ奄美島。ポカポカ陽気に「原付き最高!」と心の中では叫んでた。なのに、このトンネルはどうしたことか。まだ夜明け前の冷たさである。「原付き最悪・・」と心の中でつぶやく。陽が当たらないとはこうも違うものかと感心しながらも、私は「寒い〜!寒い!寒い!寒い!」と叫ぶことで気持ちを紛らわせ、ただひたすらにスロットルをにぎり続けた。

 なんとか命からがら大棚へたどり着いた私は、再び海岸線を走りながら陽光のありがたさを体いっぱいに感じていた。ここからはしばらく外の道が続く。また、見晴しもいいのでドライブも楽しい。大棚、大金久(おおがねく)と集落を抜けると、また大きな峠に入る。この峠を登りつめたところが嶺山公園で、平家が見張りを立てたほどだから、もちろん見晴しもいい。公園の展望台に登らずとも、峠道から目に入る眺望もまた素晴らしい。ここは気持ちいいドライビングロードだ。ただ、道のすぐ横は崖なので、あんまりよそ見もしてられない。私は、磯平パークの入口に原付きを止め、さっと眺望を楽しむことにした。

 磯平(いそひら)は、先ほどの直川智がキビを植えた場所で、今は公園として整備されている。崖の斜面には背の高いソテツが生い茂っており、遊歩道を歩いていくと海までおりることができる。散歩するにはなかなか楽しいとこなのだが、今回は深入りしない。入口でちょっと眺望を堪能したら、すぐ出発だ。

 さぁ、もうちょっとで我が生まれ故郷の地。やっとここまで来た。つづく・・


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