2/9「リュウキュウアサギマダラ」

 リュウキュウアサギマダラ。気温が15度を下回るとジッと動かなくなり、集団で越冬する蝶。

 先日、何気なく入った海岸沿いの林で蝶に出会った。「ん?蝶?」。蝶が飛んでいることに違和感をおぼえた私は、自分の思考を不思議に思った。蝶ぐらい普通に飛んでるさ。別におかしなことじゃ・・。そこで思考が中断した。いや、待てよ。そういえば冬になって蝶が飛んでいる姿を見てない。よくよく考えれば考えるほど、蝶を見ていない事実が思い出されていく。そういえば冬は虫が少ないじゃないか。それは蝶だって同じ。そうか、それで「蝶」に違和感を感じたわけか。「ん?」、なら何故あの蝶は飛んでいる?

 そうして考えながら冷静になるうちに、私は辺りをゆっくりと見回した。すると「ほほーぅ」、さっきと同じ蝶がいくつか飛んでるではないか。足を止め、私はジッと息をこらした。こうして自分自身の動きを止めると、周囲のほんのちょっとした動きさえも感じとれるようになる。「あそこ。あ、あそこにも」。時おり羽を広げたり飛び立ったり、いやはや結構な数の蝶がいるいる。

 なるほど、これがリュウキュウアサギマダラか。

 ちょうどひと月前のことだ。地元紙「南海日々新聞」にて、リュウキュウアサギマダラの集団越冬が紹介された。まだ実物を目にしたことが無い私は、「しかし面白い蝶だな」とひとしきり感心した。こうやって毎年冬になると集合し、体を寄せあい、寒さを越えようとする。たくさん集まった蝶、ジッと動かない蝶、実物はいったいどれほど神秘的な光景なんだろう。ぜひこの目で見てみたい。ふつふつと探究心が湧いてきた。

 しかし、この広い奄美大島。いったい何処をどう探せばよいのか。あてもなくさまよっても見つかるはずがない。記事をよく読むと「奄美大島北部の山間部」とある。北部ねぇ。山間部ねぇ。とても広いねぇ・・。冬はハブが鈍くなるため、これ幸いとよく山を訪れるのだが、リュウキュウアサギマダラの気配を感じたことは一度もない。だいたい山深い森の中で蝶が飛んでいる姿が想像つかない。う〜ん、イメージがわかない。こりゃダメだ。仕方がない、縁があればそのうち出会うさ。偶然にかけよう。そう思っていた。

 そして偶然はやってきた。

 出会ってみると、なるほどここならイメージもわく場所だった。海岸沿いのちょっとした森。森と言うより林だ。光がよく射しこみ、樹間には下草がよく育っている。蝶のイメージとぴったりだ。冬は山に目が行きがちで、海岸から意識が離れてしまっていたが、こういう所にいたんだな。何気なく林に入ってみるだけでこのような偶然に出会えるとは、奄美の奥の深さを改めて感じた。

 さて、大寒も過ぎ、日に日に暖かさが増してきている奄美。山にも新緑の明るい色が目立ちはじめている。木の葉のように身を隠すリュウキュウアサギマダラも、暖かさに誘われてか時おり羽を広げる。まるで伸びをするかのように。そしてそこらを飛び回り、また木の枝に集まってくる。暖かくなればなるほど、飛び回る時間も増えていくことだろう。

 春は間近だ。どんどん暖かくなれ奄美。いろんな生が動きだすほどに。


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