1/1「初泳ぎ」
「新年あけましておめでとうございます」。早いものでまた新しい年がやってきました。気が付くと奄探も3回目の年越し。今度の3月には3周年。あれよあれよと過ごしているうちに、月日はしっかりと流れていました。これからも地道に活動していきたいと思ってますので、「今年もまたどうぞよろしくお願いします」。
さて、2003年のお正月、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。私は今年、非常に貴重な体験をいたしました。それは新春「初泳ぎ」です。この冬空の寒い時期に「水泳」ですよ「水泳」。しかも温水プールではなく「海」で。それはそれはもう貴重な体験でした。。。
--
元旦。1月1日午前5時半。耳もとと足下で鳴る目覚ましに無理やり起こされる。「もうこんな時間か。眠い・・寒い・・」。現在の気温14℃。外では北風がゴーッとうなりをあげて吹いている。新年早々荒れ模様の天気だ。「こんな天気でホントに海に入るのかなぁ・・」。キンキンに冷えた海水を想像して私は身震いした。
6時。完全防寒の体勢を整え、車に乗り込む。辺りはまだ暗い。国道を走ってもすれ違う車は少ない。こんな時間だから無理もないか。でも、初泳ぎをする「アオン海岸」周辺の道路には、初日の出を見ようと結構な数の車が集まっていた。そして肝心の海は、風も波もなくとても穏やかだった。
奄美の西側に位置して東シナ海に面している名瀬湾は、冬の間けっこう海が荒れる。冬はアジア大陸の方から強く冷たい風が吹いてくるため、その影響を受けるのだ。対して、奄美の東側で太平洋に面した海岸は、冬型の風が猛威をふるう中でも穏やかな様相を見せてくれる。元旦の朝、私は改めてその事実を実感した。出発した我が家の周辺はとんでもない風だったのに、目的地に着いてみるとこの穏やかさ。その違いは私に「これなら泳げるかも」と大きな勘違いをおこさせるほどだった。
戸口周辺の天候は晴れ。水平線付近に雲がかかっているが、初日の出を拝むことはできそうだ。風もなく波もなく、実に静かで穏やかな雰囲気が漂っている。東の空に浮かんだ三日月は限り無く細く、太陽の先導をつとめるように周囲の視線を集めている。とても美しい光景が広がっていた。元旦の朝からこんな情緒的な風景に出会えるとは何と幸せなことだろう。しかし、感動もつかの間。現実に目を向け素足を海に浸すと、しびれるような冷たさが脳の神経を打ち抜いた。「誰だ?海の中が暖かいと言ったのは・・」
出撃の時間は刻一刻と迫っていた。火が焚かれ、辺りが白け出す。もうすぐ日が登る。そして私は服を脱ぎ、海に入った。
沖に向かって歩き出す。足先から次第に冷たさが持ち上がってくる。膝まで海につかると上半身の寒さはもはや問題ではなくなった。冷たい。なんて冷たい。まるで氷水に足を突っ込んでるようだ。私が英語圏の人間なら間違い無く「How! What! Oh!」系の言葉を連呼していたことだろう。だが私は日本語圏。発した言葉は「・・・」。もう完全に言葉を失っていた。
それにしてもこの冷たさ、耐えられない。小学校時代に水泳をしていた弟が、「自分は初泳ぎ拒否したよ。足入れて“ありえん!”って思った」と言ってた気持ちもよくわかる。こりゃ拒否したくなるなぁ。でも引き返すわけにもいかんなぁ。かといってこのまま先に進む自分がイメージできないなぁ。どうしよう・・。もう体は腰近くまで浸かっているが、腹から上がどうにもこうにも我慢できない。どうしよう・・。この冷たさは異常である。これは問題だ。うーん、本当にどうしよう・・。しばし悩んだ末、私は結論に達した。「こうなりゃやけだ!」
ザッブ〜ン
こんな冷水、勢いでもなけりゃ入っていけない。そう思った私はおもいきって飛び込んだ。後は必死。本当に必死。動き続けなければ、動き続けて体温を上げなければ・・・。そう思って必死で泳いだ。時々、「お前大丈夫か?」と体にたずねながら。
結局、なんとか泳ぎきることはできた。泳ぎながら真っ赤に燃えた初日の出を拝むこともできたし、寒がりの自分の限界を超えることもできたし、それはそれは貴重な時間だった。しかも、話に聞いていた通り沖の方は海水が暖かくて(暖かく感じて?)びっくりした。「これなら大丈夫」と安心して泳いでいられたから結構な暖かさだったと思う。だが、海岸付近のあの水温はたまったもんじゃなかった。奄美周辺は暖流が流れてくるから暖かいとは言っても、海岸付近は浅いから水もよく冷えるのだろう。「この時期はスーツ着てても震えるど」と素潜りをする叔父から後日聞いて「あの冷たさは本物だ」と納得した。とにもかくにもいい経験になった。
帰宅後、風呂につかっても暖かい格好をしても、その日は一日中芯から温まることはできなかった。体の奥に冷えた棒が入っているようで何だかしっくりこなかった。冬の海恐るべし。また機会があれば泳いでみよう!(とはきっともう思わないだろう・・)。