10/23 「水色の背中を持つカニ」

 9月から10月にかけて随分晴れの日が多い気がしたが、そんな秋晴れ気分ももう息切れなのか、ちょっと前から低い雲とシトシト雨、そして強くて冷たい風が吹くようになった。そろそろ冬支度の始まりだろうか。寒さの気配をじわじわと感じる今日この頃。

 先日、撮りだめていたフィルムを現像に出したところ、できあがってきた写真の中に9月の終わりの頃に行ったマングローブの風景があった。そういえばその日は、従弟や弟達を連れてマングローブを色々と探検したっけな。写真を眺めていると記憶が少しずつ思い出されてきた。

 その日、僕らは満潮を目安に出かけ、まずはカヌーで支流を散策した。カヌーを漕ぎ、トンネルのようにかぶさるメヒルギの群落の中に入り、緑に包まれてゆっくりと時を過ごした。時おりシラサギが現れて森の中を通り過ぎていった。空気までもが静かな雰囲気に包まれているようだった。

 しばらく過ごした後、僕らは再びパドルを水に入れ支流から川へと戻った。時間の経過は形になって川辺に現れており、さっきまでカヌーで通れた場所は干潟となって広大な陸地に変わっていた。目を凝らすと手を上げ下げするカニの姿が見えた。シオマネキはいつものように白い大きなハサミを大事そうに抱えていた。

 それから、広々とひろがる干潟の遠くを目を凝らしてよく見ると、ダンゴがコロコロと集まってるように見えるものがある。そのダンゴの正体は実は、丸い形をした変わったカニなのだ。彼等は名をミナミコメツキガニといい、見つけた時にはたいてい水辺に向かって歩いている。それはもう物凄い集団で歩いているのだが、これがまた用心深いカニで、形が見てとれるほど近寄る頃には、いつの間にか地上にもう姿は無い。「あれ?何かいたような気がしたんだが・・」となる。彼等は泥の中に潜るのがとても上手く、注意深く行動しないと姿を拝むのも難しいカニなのだ。

 そんなミナミコメツキガニは、夏は黒っぽい体色をしている。だが、先日マングローブを訪れた時には、体は綺麗な水色をしていた。前々から「冬になると体の色が水色になる」と聞いてはいたのだが、実際に目にするのは初めてで、その美しさに驚きと感動をおぼえた。

 それにしても、どうして冬になると色が変わるのか? また、いつも水辺に向かって歩いているが、その後はどうなるのか? 疑問がふつふつと浮かんでくる。今度じっくり生態を観察してみたくなった。


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