6/17 「アダンの熟れる頃」
先日、ひと足早い台風がやってきた。といっても実際は、ちょっとかすめただけで強い風も吹かず、強い雨も降らず、つまり何の影響も無かったのだけど、去年に引き続き早い時期の台風にちょっと驚いた。
梅雨に入って梅雨らしくない天気が続いていたが、近ごろはそうでもない。梅雨らしい天気の日々が続いている。特に最近は猛り狂ったように雨が降り、その中を自動車で走ると、フロントガラスに大粒の雨が当たってビチャッと弾け広がる。トマトか何か水気の多い果物をぶつけられてるようであまり気分はよくない。もちろん視界もよくない。(そういえばトマトは野菜か?)
そんな梅雨らしくなった日々の中、台風の過ぎた翌日だけは真夏のようにカラッと晴れた。いわゆる台風一過というやつだ。陽気に誘われて海を訪ねた。笠利の道を海沿いに走りながら、笠利崎、用海岸、あやまる岬、土盛海岸と途中途中車を止め浜に寄った。浜の感じはそれぞれに違うが、その日はどれもとても美しい表情を見せてくれていた。気持ちのいい空の色をさらに鮮やかにした海の色がそこにはあった。青とエメラルドが重なりあい表現しがたい深い色を生んでいる。まさしく夏の色だ。
その道中、あやまる岬でのこと。真っ赤に熟れたアダンの実が、台風の風に吹かれてか吹かれないでか、浜に落ちて割れていた。浜に転がったアダンの実は、白い砂に映えてドギツイ色をしていた。原色に誘われて近付いてみると、どうやら私より先に誘われたお客がいたようで、カサカサカサカサと物音がする。ヤドカリだった。
アダンの実は「口のまわりが痒くなるけど食べられる」と母から聞いたことがある。でも特に食べてみようと思ったことはない。しかしヤドカリ達は、実の裂け目に群がって一心不乱に食べている。ささくれた繊維質の実をほじってほじってつまんでつまんで切っては食べ切っては食べ、ムシャムシャと音が聞こえてきそう。そんなに旨いのなら「今度かじってみようかな」と思った。
このヤドカリ達、予想以上に警戒心が強く、近付くとすぐ逃げていく。だから砂浜に這いつくばって静かに忍び寄り写真を撮った。
その日、家に帰って肌が赤くなってることに気付いた。そんなに太陽の下にいたつもりはないのだが、知らず知らず日焼けしていたようだ。奄美に降りそそぐ太陽は、やはり力強いのだな。今は梅雨空の向こうだが、はやくまた顔を出してくれることを願っている。