12/29 「灰色をつきぬけた向こうの世界」
年末の休息。温泉地「霧島」へと行ってきた。
霧島は山岳地帯。昔、3月の終わりに友人の車を借りて霧島に向かったことがある。春雨が落ちるなかのことだった。特に目的があったわけではないが、気のむくまま宮崎との県境へと車を走らせた。霧島の宿場町を過ぎて、大浪池登山口を過ぎて、宮崎県。えびの高原を横目にまだ車を走らせると、いつの間にか雨は雪へと変わっていた。山、そして高さというものが気温に与える影響を目の当たりにした瞬間だった。
その時の記憶があったから、今回の霧島旅行にも少し期待するところがあった。もしや雪が降るのではないだろうか、と。
以前来た時と同じように県境へと車を走らせる。霧島の宿場町を過ぎると道路の傍らにちらほらと雪が見られた。そして大浪池登山口を過ぎると、辺りは、車を走らせるほどに雪化粧におおわれていく。今回はレンタカー。ラジアルタイヤが心許なくて心配しーしーアクセルを踏む。えびのに着いた頃にはもう一面の雪景色だった。まさかこれほどまでとは、と思うほどに。
その後、レンタカーの足じゃ不安だったので、山を少し下って大浪池登山口まで戻り、そこから今度は自分の足で山を登ることにした。秋の美しい様を何度か写真で見たことがあったので、以前から登ってみたかった大浪池。「冬の大浪池はどんなだろう」と淡い期待を抱きながら雪の登山道を1歩1歩踏みしめていった。歩くこと30分。辺りが開けると、目の前の光景に絶句した。犬じゃないが嬉しくなって駆け出した。カメラを構え次から次へとシャッターを切った。心震える美しさだった。見たことのない世界だった。
暖かい奄美には奄美なりのいいところがある。夏の極彩色は狂おしいほどにぎやかだし、顔を見せてくれさえすれば陽射しはいつだって力強い。そう、顔を見せてくれさえすれば。ただ、なんの言葉もなく押し黙ったように続いていく雲。広がっていく雲。灰色の雲。冬の空は切ないほど寂しい。奄美より北へ向かえばどうだろう。まだ、あの灰色の雲は続いているだろうか。おそらくそうだろう。あの灰色の空は続いてるだろう。そして辺りには緑もなくなるだろう。木の枝にはもう何ひとつ残っておらず、枯れ果てたように色を失った木々が、ただ立ち並んでいることだろう。なら、あの雲を突き抜けたらどうだろう。あの灰色の雲を突き抜ければ、枯渇色の大地を踏みしめれば、どうだろう。知らぬ間に冬の精はあたりを包みこみ、冷たい花はそっと木々に宿り、木枯らし色の大地は冬の輝きを手に入れるだろう。きっとそうだろう。
灰色を突き抜けた向こうの世界。それに触れた霧島の旅だった。