3/28 「山が緑でにぎわう時」

 「深く濃い」常緑の緑の上を、「若く色鮮やかな」新緑の緑がおおう。その勢いは山を塗りかえんとし、勢いに彩られた山はにぎわい、葉を震わせ、村々にかぶさらんばかりに、こんもりと視覚に迫ってくる。

 山奮い立つ。奄美の春。

 本土で桜の開花が巷の噂となり、「桜前線」の名のもとに日本地図が淡く塗りつぶされていく頃、奄美の山々は一般で言う「五月の様相」を見せる。ここの春はひと月早いのか。いいや、山と、そして夏がせっかちなだけ。肌寒さが過ぎ去る頃、全ては夏に向けて動き出す。

 3月の終わり。卒業式、修了式、離任式。別れの季節。4月の初め。入学式、始業式、就任式。出会いの季節。桜の花びらの散り舞う中、初めて学校の門をくぐったのはいつの日か。それは遠い日のもう忘れそうな淡い想い出。そのような淡い桃色の情緒は、この島には無い。

 木々が恐ろしいほどの生命力をたぎらせる中、島の子たちは新しい門をくぐる。淡い桃色に決して負けやしない狂おしさ。山は緑に萌えあがり、その存在感は、見れば見るほど圧倒的なのに、決して淡い桃色ほど心に残りやしない。だが、山は奮い立つ。この島をこの島であらせている緑の息吹を見せつけるために。4月。奄美の春は、山の主張で芽を覚ます。


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