10/20 「赤いソテツ」

 赤いソテツの実の熟れる頃〜。今、奄美のあちこちではソテツが実をつけ始めている。黒く伸びた体の先端にトゲのある葉をいっぱいに広げ、その中央に大きな頭のような丸い物体を据える。この物体の中に真っ赤なソテツの実がたくさん入っているのだ。

 実際、ソテツの実を抱えるこの物体は、卵を抱える鳥の巣とよく似ている。次代の命を守り育む「巣」。その守るべき命が鳥の場合は"卵"であり、ソテツの場合は"赤い実"であったというだけなのだ。同じ「巣」としての役割はどちらもそれほど変わらない。

 このソテツの巣、奄美では道路の並木がわりにソテツが植えられているので、あちらこちらで目にすることができる。六月の頃に雄株に咲く黄色い砲弾状の花といい、今この季節に雌株に座る頭のような巣といい、ソテツが体の天辺につけるものは異様で風変わりである。その自己主張の強い姿はきっと、ドライブしながらでも気付くことだろう。

 秋といば"紅葉狩り"でにぎわう日本だが、それは本土の話であり、奄美では紅葉と呼べるような立派な衣替えは見当たらない。山はいつだって緑に覆われているし、道路に枯れ葉が敷きつめられることも無い。毎年「秋だ」と感じる間もなく時は過ぎ、いつの間にやら冷たい風の吹く冬が訪れている。そんな季節変化の乏しい島なだけに、ソテツの天辺に実る一つの形は「今頃が秋なんだよ」と僕らに教えてくれているようで少し嬉しくもある。


<<--インデックスへ
(C)ポケット奄探
i.amamicco.net